【がん予防・臨床・疫学研究】大腸が温存されている家族性大腸腺腫症に対する低用量アスピリンの大腸がん予防(京都府立医科大学・武藤倫弘)
・https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33812492/
・THE LANCET Gastroenterology & Hepatology. 2021 Jun;6(6):474-481. DOI:https://doi.org/10.1016/S2468-1253(21)00018-2.
Chemoprevention with low-dose aspirin, mesalazine, or both in patients with familial adenomatous polyposis without previous colectomy (J-FAPP Study IV): a multicentre, double-blind, randomised, two-by-two factorial design trial
家族性大腸腺腫症(FAP)における大腸がん予防のための標準治療は、20歳頃の大腸全摘のみです。しかし20歳頃に大腸を全摘するとその後の生活に大きく影響しますので、大腸を全摘せずに大腸がんを予防する方法の開発が強く望まれていました。本論文は、手術を受けていなく大腸が温存された16歳以上70歳までのFAP患者で、5 mm以上の大腸ポリープを内視鏡的にすべて摘除できた102人を対象に、低用量アスピリン腸溶錠(100 mg/日)and/orメサラジン(2 g/日)を8ヶ月間投与する(2×2 factorial designによる二重盲検無作為割付臨床試験)と、低用量アスピリン投与群において8ヶ月後の5 mm以上の大腸ポリープの発生は、非アスピリン投与群と比べて、その1/3近くにまで減少することを示しました。さらに低用量アスピリンは、左側大腸(下行結腸~直腸)においてポリープの増大を強く抑制しました。成人で大腸が温存されているFAP患者の試験としては世界最大規模の試験でもあり、FAP患者の治療選択肢が増えることが期待される結果でした。(文責:京都府立医科大学・武藤倫弘)