【がん・疫学研究】肥満度と大腸がんリスクとの関連:アジア人初のゲノム疫学研究からの成果(国立がん研究センター・岩崎基)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33506574/
Cancer Sci. 2021 Apr;112(4):1579-1588. doi: 10.1111/cas.14824. Epub 2021 Feb 25.
Body mass index and colorectal cancer risk: A Mendelian randomization study
肥満は大腸がんのリスク因子の一つとして知られています。これは、肥満度が高い集団は、低い集団に比べて大腸がんリスクが高いという観察研究の結果が根拠となっています。しかし従来の観察研究では、比較する集団間の背景因子を均等にすることが困難であり、交絡の影響を完全に排除することはできません。この交絡の問題への対処法として、近年、メンデルのランダム化解析が注目されています。この解析は、遺伝子多型のアレルがランダムに分配されるという性質を利用し、ゲノム情報で予測した肥満度と大腸がんリスクを検討することから、交絡の影響を受けにくいと言われています。本論文では、日本分子疫学コンソーシアムの日本人一般集団約36,000人のBody mass index(BMI)とゲノム情報、および、本コンソーシアムの中で利用可能なデータと国内の公開データを合わせた大腸がん約7,500症例と対照37,000例のゲノム情報を用いて、メンデルのランダム化解析を行いました。その結果、遺伝的に予測されるBMIが増加するにつれて、大腸がんリスクが増加するという関連を、アジア人で初めて明らかにしました。従来の観察研究と比べ、交絡の影響を受けにくいメンデルのランダム化解析においても、BMIが大腸がんリスクと関連していたことは、因果関係を評価するうえで重要な知見となります。(文責:国立がん研究センター・岩崎 基)