【がん・疫学研究】診断から治療開始までの期間ががん患者の予後に与える影響(金沢医科大学・西野善一)

https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2774101

JAMA Netw Open. 2020 Dec 1;3(12):e2030072.

doi: 10.1001/jamanetworkopen.2020.30072.

Assessment of time-to-treatment initiation and survival in a cohort of patients with common cancers.

 

新型コロナウイルス感染症のパンデミックががん診療に与える影響が懸念されている。この研究はがんの診断から治療開始までの期間(time-to-treatment initiation: TTI)の長期化が予後に与える影響を米国の診断症例の70%以上を登録するNational Cancer Database (NCDB)2004年から2015年までのデータを用いて分析を行っている。対象は乳がん、前立腺がん、非小細胞肺がん、結腸がんの非転移症例2,241,706人であり、患者、施設特性を共変量として補正したCox比例ハザードモデルを用い、TTIを4つの群に分けて群間の5年後、10年後の予測全死亡率を部位別、病期別に比較している。その結果、全般的にTTIの長期化とともに死亡率が増加し、結腸で最も顕著な差(StageⅢの5年後死亡率が8-6034.6%61-12038.9%121-18042.1%181-36547.8%)を認めた。また生存曲線は低リスクの前立腺とStageⅡの肺を除いて群間で有意差が存在した。本研究は観察研究であり治療開始の遅延と関連する交絡要因が十分に補正されていない。そのため今回の結果は治療開始の遅延が予後に与える影響についての上限(「最悪のシナリオ」)として解釈されるべきものである。日本でもTTIの現状と推移および予後への影響についての検証が求められる。(文責:金沢医科大学・西野 善一)