理事長挨拶

日本がん予防学会 理事長 石川秀樹

 2016年に、日本がん予防学会は初めての理事選挙があり、選挙で選ばれた理事の互選により私は2017年1月1日より日本がん予防学会の理事長に就任しました。それから2年ごとに理事選挙、理事長の選任があり、10年弱、理事長を担当させて頂きました。2025年も理事選挙と理事長の選任があり、私が引き続き、これから2年間、理事長を担当させて頂くことになりました。よろしくお願い申しあげます。

 本学会でこれからの2年間、重点的に活動する予定の「大腸がん予防プロジェクト」と、本学会がこれまでに実施してきました「がんの化学予防研究の推進・支援」と「国民へのがん予防啓発」の活動成果を紹介します。


「大腸がん予防プロジェクト」
 2024年11月に大腸がん検診ガイドラインが19年ぶりに改訂されました。大腸がん検診における大腸内視鏡の位置づけは推奨C「対策型検診では実施しないことを推奨する」となり、今までと同様、便潜血を用いた検診が推奨Aとなりました。北欧での大腸内視鏡検査の無作為割付ランダム化試験である「NordICC Study」など、これまでの臨床試験の結果からガイドラインの判断がこのような形になるのは仕方ないと思います。しかし、便潜血による対策型大腸がん検診が施行されてから20年以上経過したにも関わらず、いまだに女性のがん死因のトップは大腸がん(男性の死因2位)です。これまでも検診の現場では大腸がん検診の普及に努力されてきたと思いますが、現状の大腸がん検診が成功しているとは決して言えない状況であり、別の対策を考える必要があると思いました。
 「NordICC Study」では内視鏡介入群のわずか42%しか大腸内視鏡検査を受けなかったことが、ITT解析で有意な結果にならなかった理由であり、きっちりと大腸内視鏡検査を受けている群での解析では、大腸がん死は減少しています。国立がん研究センターの内視鏡医が青森に出向いて無償で大腸内視鏡検査をする青森プロジェクトでも、大腸内視鏡検査の希望者が少なかったと聞きますし、現状ではなかなか大腸内視鏡検査を受けたいと思う人が増えないようです。
 米国は、National Polyp Study(NPS)の結果を受けて、50歳頃に国民全員に大腸内視鏡検査を実施することを推奨し、大腸がんの罹患・死亡は激減し、人口あたり日本の1/3まで大腸がん死を減らすことに成功しています。大腸内視鏡検査は、現在の大腸がんを見つけるだけでなく、前がん病変である腺腫を摘除することにより、将来の大腸がんも予防できる素晴らしい検査です。このような大腸内視鏡検査の長所を、医療従事者や研究者が国民に積極的に啓発しなかったために、大腸がん予防のために大腸内視鏡検査を受けたいと思う人たちが増えなかったと考えました。
 そこで、日本がん予防学会として、大腸内視鏡検査の長所を丁寧に説明し、大腸内視鏡検査を積極的に受けることを推奨するキャンペーンを行うことを考え、理事会、評議員会に本プロジェクトを提案して承認をえました。
 これから、わかりやすく米国の成功事例を紹介する資料や、大腸内視鏡検査を受けるための具体的な冊子などを作成し、国民に広く啓発していきたいと考えています。

「がんの化学予防研究の推進・支援」
  がんの化学予防研究の発展のために、学会において化学予防の基礎研究者、疫学者と臨床研究者が意見交換する場を設け、がん予防臨床試験実施を支援するため、鈴木秀和先生に担当理事となって頂き、委員会を作成しました。その委員会で数回検討したリンチ症候群に対する化学予防研究の臨床試験は2025年度のAMED研究に採択されました。
 臨床研究法や生命・医学系指針、個人情報保護法などにより、臨床研究の実施がとても難しくなってきていますので、これからもがんの化学予防研究の基盤の一部を担えるようなシステムを維持していきます。

「国民へのがん予防啓発」
  日本がん予防学会の主な目的のひとつとして、日本国民への正しいがん予防知識の普及があります。その目的の実行のために、武藤倫弘先生に担当理事となって頂き「認定がん予防エキスパート制度」が設置されました。学術集会に合わせて、定期的にがん予防認定制度セミナーが開催され、これまでに多くの学会員が認定されています。認定者が市民公開講演等で講師をされる時には、この認定者であることを明記して頂くようにしています。これからも継続してセミナーを開催し、認定者を増やし、正確ながん予防情報を多くの国民に情報発信できるように、引き続き、この事業を続ける予定です。
 本セミナーの対象者は、医療関係従事者(医師、保健師、看護師、栄養士、薬剤師など)、研究者、企業従事者(農学、栄養学部研究者、企業内研究者、公的機関研究者)などとしています。

 これからの2年間もがんの化学予防研究の推進と、がん予防情報の市民への啓発を中心に学会活動を進めていきます。引き続き本学会の活動について、会員諸兄ならびに一般市民の方々の積極的なご支援・ご協力を心からお願い申し上げます。

2025年9月
日本がん予防学会 理事長
石川 秀樹
(京都府立医科大学分子標的予防医学)